施設を増やせば解決するのでしょうか?
この記事を書いている10月半ば、BC州では州議会選挙と市の選挙をめぐり、選挙戦が盛り上がっています。先日の党首討論でも、「Health Care(医療・保健)」は大きな論点の一つでした。
それも当然のことだと思います。州民が必要なときに適切な医療を受けられるよう、病院や医療サービスを整えることは、州政府の重要な役割です。現政権が進めてきた既存病院の拡張、新しい医学部の創設、医療従事者の確保に向けた取り組みなどには、評価できる点もあると思います。
一方で、「介護」という分野については、まだ十分な解決策が見えてこないという印象を受けました。
病院での治療を終え、必ずしも入院を続ける必要はないものの、自宅に戻るための支援や次の受け入れ先が確保できず、退院できない方がいます。こうした方々を自宅や地域で支える必要性は、10年以上前から指摘されてきました。しかし、訪問介護を担う人材も十分ではなく、現状では必要な支援が思うように行き届いていません。
また、新たに整備される予定だったLong-Term Care(LTC/長期介護施設)の7つのプロジェクトについても、建設費の高騰などが課題となっています。
では、実際にどれくらい不足しているのでしょうか?
BC州のSeniors Advocate(高齢者問題を扱う独立機関)が公表した資料を見ると、介護施設をめぐる状況の厳しさが分かります。

※これらはそれぞれ異なる指標であり、同じものを別の方法で数えた数字ではありません。将来の追加需要は、今後の人口や介護ニーズを踏まえた推計です。
さらに、地域からの非緊急の入所については、平均待機日数がVancouver Coastal Health(VCH)で473日、Fraser Health(FH)で402日という数字も公表されています。
これらは、決して小さな数字ではありません。
例えば、160床の施設を100か所新設すれば、合計16,000床になります。しかし、それだけの施設を建設するには、土地や建設費だけでなく、実際にケアを提供する介護職員や看護職員を確保しなければなりません。
つまり、施設を建てればすべて解決する、という単純な問題ではないのです。
では、私たちはこの状況をどう受け止めればよいのでしょうか。
「施設に入れば安心」とは限らない時代に
LTCに入りたくても、すぐには入れない可能性がある。そうであれば、在宅で暮らせる時間をできるだけ長く保つことも、これまで以上に重要になってきます。
そのために、まず大切なのは、自分自身が元気に暮らし続けられるよう、日頃から健康や生活習慣に気を配ることです。
もちろん、自分が健康であっても、配偶者やご両親など、身近な家族に介護が必要になることはあります。そんなとき、家族だけで支え続けるのは簡単ではありません。
公的・民間の訪問介護サービスを利用したくても、地域によっては十分な人材が確保できず、必要な支援を受けられないことがあります。
さらに、今後LTC施設を増やしていくのであれば、そこで働く人材も必要になります。
では、その介護を担う人たちを、どこから、どのように確保していくのでしょうか。
これは、施設の建設と同じくらい重要な課題だと思います。
もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。
認知機能が低下し、ご自身で安全な生活を判断することが難しくなった場合、Assisted Living(一定の自立性を保ちながら、住居と日常生活の支援を受ける施設)への入居が難しくなることがあります。必要な介護の程度によっては、より手厚い支援を受けられる環境を探さなければなりません。
つまり、住まいを確保するだけでなく、その人の状態に合ったケアを受けられる場所を確保することも、大きな課題なのです。
今後、私たちにできること
今回の選挙公約を見ていると、Health Careの中でも、特に介護の分野には、まだ明確な解決への道筋が見えていないと感じます。しかし、政府が解決してくれるのを待つだけでなく、私たち自身にもできることがあると思います。
まず、問題が起きる前に、将来について家族で話し合ってみませんか。
年齢を重ねたとき、どのような支援が必要になりそうか、どこで暮らし続けたいか、介護が必要になった場合にどのような選択肢があるのか。配偶者や家族と話し合い、利用できるサービスについて少しずつ情報を集めておくことは、いざというときの大きな助けになります。
次に、私たちの声を届けることも大切です。
在宅介護サービスの充実、LTCのベッド不足、そして介護を担う専門職の確保。これらは、誰にとっても無関係ではない問題です。疑問を持ったら質問し、自分たちの経験を共有し、選挙で選ばれた代表者に声を届けることで、介護の問題を社会全体の重要な課題として考え続けてもらうことができます。
そして、私たち日系コミュニティにも、大切な役割があると思います。
高齢者ができるだけ長く自立した生活を続けられるようにするには、何ができるでしょうか。家族の介護に悩む方々を、どのように支えられるでしょうか。そして、問題が深刻になる前に、必要なサービスや支援につなげるには、どのような仕組みが必要でしょうか。
こうしたことを、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
私自身、10年以上この分野に携わってきた経験から、LTCへの入所は、単純に申し込んだ順番で決まるわけではなく、ご本人の状態や介護の必要性などを踏まえて優先順位が判断されることを知っています。平均待機日数は気になる数字ですが、必ずしも一人ひとりの待ち時間を示すものではありません。
Nikoniko Home Careとして、私は次の一歩を踏み出したいと考えています。地域の皆さんの声に耳を傾け、支援が不足している部分を見つけ、実際に役立つ解決策へとつなげていくことです。
介護は、政府だけの問題でも、高齢者だけの問題でもありません。自分自身や、大切な家族が直面するかもしれない、私たちみんなに関わる課題です。
今から話し合いを始め、知っていることや経験を共有し、一緒に取り組んでいきませんか。
誰もが尊厳を持って年齢を重ね、必要なケアを受けられ、そして「一人ではない」と感じられる地域を、皆さんと一緒につくっていきたいと思います。